Manhattan Portage BLACK LABEL Presents
各業界のインフルエンサーがオーナーを務める1夜限定のサロン

B SALONvol.5

今夜のオーナー

板坂 諭

建築家/デザイナー  1978年生まれ

BAG : PENN STATION TRAVEL BAG

建築、プロダクト、そしてアートの領域を横断的に活動し、いま、世界的に注目を集めている日本人デザイナー板坂諭さん。2017年最後となるB SALONは、彼がワンナイトオーナーに登場。お酒を片手に、これまでの作品を振り返りながら、そのこだわりや裏話を語っていただきました。

̶̶建築もプロダクトも設計デザインされていますが、いちばん初めにご自身が中心となって遂行された仕事は、何だったのですか?

建築です。大学卒業後に、設計事務所に勤務していて、そこでプロジェクトリーダーとして初めて担当したのは、住宅でした。3階建てで中庭がある、大きな家で、こういった住居は、既存の家具では収まりが悪いことも多く、クライアントの依頼で作り付けの家具を設計することもあるんです。この住宅の際もそうで、リビングの巨大なテーブルなどは、既製品ではなくオリジナルで設計しています。こうした経験は、今のプロダクトのデザインも活かされていると思いますね。

̶̶空間デザインのようなお仕事もされていますよね?

はい。たとえば、ISSEI MIYAKE社が展開するブランドのひとつHaaTの15周年記念のエキシビションの空間デザインなど。 このブランドは、日本の伝統や最新技術を駆使したテキスタイル、また国内外の職人の繊細な手仕事を活かした服や小物を提案しています。ぱっと見ではわからなくても、布地を近くで見ると、驚くようなディテールが施されていたりする。でも、そのスゴさって、そこまで多くの人に伝わっていないような、気がしたんです。で、まず、空間としては、その想いを日本中に広げたいということで、水面の波が広がるように、テーブルを配置し、商品を展示。そして、洋服や小物の“ここがスゴい”という箇所に水滴をモチーフにしたガラスレンズを置きました。これが、虫眼鏡のような役割をしていて、ガラスの水滴を覗くと、そのディテールが拡大されて見えるという仕掛けです。

̶̶すごく詩的な感性ですね。こうした板坂さんのセンスは、特にプロダクト分野で顕著に発揮されていると思うのですが、まずいちばん初めに作ったプロダクトとは?

椅子『Ivy Chair』ですね。東京って自然がなくてコンクリートだらけですよね。でも、人間って自然の中にいる方が絶対に心地よいと思うんです。で、都会の中でなくなったはずの自然を、白い葉っぱで表現。“ここに座って本を読めたらいいな”って思いながら作った作品ですね。

̶̶コンセプシャルですね!

別にアートピースのような椅子を作りたかったというわけではなく、残念ながら、座り心地のよいデザインの椅子って、すでに沢山ある。では、“自分にできることで、世の中にインパクトが与えられることは?”って考えた時に、コンセプトを設けて、デザインで表現することだと思ったのです。だから、この椅子、正直な話を言うと、座り心地はそこまでよくない(笑)。

̶̶“座り心地”だけが、この作品を評価するポイントではないということですよね。風船で吊るされたような『Balloon Bench』や『Balloon Chair』も、様々なメディアで拝見していますが、機能性よりも、視覚的な遊び心が効いた素敵な作品だと。

『Balloon Bench』は、もう趣味ですね(笑)。子どもが座っていたら、可愛いなって。この作品は、風船の紐がワイヤーになっていて、椅子をブランコのように天井から吊るしている。その天井のアンカーをプラスチックの風船で隠しているんです。この作品をいちばん初めに買ってくれたのは、デビットさんと言う海外の方。フランスのボルドーにレストランを作るから、このベンチが欲しいと突然、連絡が来たんです。でも、簡単には吊るせないので、僕も現場に。で、食事でもしようと一緒に街を歩いていたら、町の人々がやたら彼に声をかける。聞いたら、当時、プレミアリーグにも出場していた有名なサッカー選手の方でした。

̶̶まったく知らなかったのですか?

ええ。日本に帰ってネットで調べたら、いっぱいシュートを決めてました(笑)。

̶̶先ほど、“モノ”のデザインで、現代社会や個人が抱える問題に対してアプローチできないか、実践されていると仰られましたが、社会的な問題意識から生み出した作品とは?

ひとつは、照明の作品『Mushroom Lamp』ですね。これ、キノコ雲がモチーフなんです。日本人として忘れてはいけない、知っていくべき“記憶”の象徴だと思うのですが、なんとなくその意識が希薄になっているような気がして。実は、この作品を作った時3.11が起こってしまったんです。

福島原発の水素爆発もあり、外国のメディアから注目されたこともあり、サンフランシスコ近代美術館のキュレーターがこの作品を購入。収蔵作品になっています。『The Birth』も、ニュースを見ていて、人間の命の尊厳が薄れているような気がしたことが制作の動機です。ちょうど産婦人科の先生から、生命が生まれる時、つまり精子と卵子がぶつかった瞬間って、卵子が光ると聞いて。実際に、それを顕微鏡で見せていただいたりしながら、デザインしました。

̶̶エルメスのフランス本社とも直接契約をされ、新しいプロダクトを生み出していると伺いました。これはどういう経緯で?

エルメスとの関わりは、2015年に、京都でエルメスの技と、アーティストやデザイナーのセンスをコラボレートするイベント「プティ アッシュ」があり、それにお声掛けいただいたのがきっかけ。その時、僕が制作したのは、エルメスのうつわをベースにしたもの。割れなどがあって、“エラー”として商品にならなかったうつわに金継(きんつぎ)を施しました。つい最近も、エルメスのソウルのショップで新作発表会があったのですが、そこではクリスタルの作品を展示。柄をグニャって曲がったワイングラスですが、これもベースになっているのは、気泡が入り販売できなくなったものです。“B級品だよ”って宣告されて落ち込んでいるような姿を表現しました。ちなみに、クリスタルの融点は1000度くらい。簡単に柄を曲げたりできず、再びクリスタルをその温度下においても、柄よりも薄い部分が先に溶けてしまうという問題がありました。それをある金沢の職人さんが解決してくださった。どうやったかというと、人間が防護服を着て高温になった空間に入っていき、曲げるという……。本当に命がけで作ってくださり、エルメスの方も驚いていましたね。

̶̶さて、ご愛用のバッグについてお話を聞きたいのですが。

マンハッタン ポーテージ ブラックレーベルのトラベルバッグです。その韓国への出張も、これのバッグだけ。もともと荷物が少ない方なので、2泊3日程度ならば、このバッグで十分。ちなみに、これ、ブリーフケースにも、ショルダーにも、リュックにもなるんですが、ソウルの街を散歩するときは、リュックにしていました。久しぶりのリュックで、小学生のランドセル以来(笑)。で、使っていて、すごく気が利いた設計というか、ものの出し入れでも、動作やシチュエーションなどを先読みして適切な位置や大きさのポケットが実装されているな、と思いましたね。

̶̶板坂さんお墨付きの設計ですね!

ええ。使いながら、ファスナーやポケットなど、設計者の意図を分析しているのですが、ただ、謎のポケットがひとつだけあるんです。リュックにした時に背中面にある、ファスナー付きポケット。これがなぜあるのかが、わからない。

̶̶それは、ファスナーを開けて筒状にして、キャリーケースにドッキングさせるものですね。

おお、なるほど。僕は、カバンに関しては、これまでできるだけシンプルなものを使っていたんですが、こうした、その時々のシチュエーションに対して変化してくれるのっていいなと改めて思いますね。

̶̶最後に、将来の目標を教えてください。

ホテルや美術館の建築設計をやってみたいとは思っています。あとは、やはり社会貢献をしたい。先ほども何度か言いましたが、デザインやクリエイティブの力で、社会問題に気づきを促したり、解決に導くようなことってできると思いますから。実は、現在、ある病院のアートディレクションをやらせていただいているんです。その病院は幼稚園の運営もやっていて、先日、子どもたちのアートづくりのワークショップをやりつつ、そこでできた作品を病棟に飾流というコラボプロジェクトを行なっています。病院が、病気になった人が来る場所だけでなく、ハッピーになれる場所であったらいいなと思って。

̶̶建築もプロダクトも、そういったプロジェクトや仕組み作りもクリエーションと呼ぶべきだと思います。が、やはり、板坂さんにとって中心にあるのは、建築なのでしょうか?

20世紀初頭にできた、バウハウスという学校があるのですが、その初代校長のグロピウスは“建築は総合芸術だ”と言っていて、僕もすごく納得できるんです。僕の中で、建築もプロダクトも区分けはなくて、プロダクトをたくさん集積すれば、建築になると思いますし。ただ、建築という方法論は、自分の頭の中に常にありますね。

板坂 諭(いたさか さとし)

1978年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、設計義務所勤務を経て、2010年にプロダクトを手がける「h220430」を、2012年、建築事務所「ザ・デザインラボ」を設立。建築をベースにプロダクト、そしてアートの領域で活躍。2016年は、ミラノのデザインウィークに参加。ミュージアム等にコレクション化された作品もある。作品集に『New Made in Japan 』(青舎社)がある。
h220430
the design labo


PENN STATION TRAVEL BAGItem No.MP1756BL

¥45,360

シーンや用途に合わせて、ブリーフ、ショルダー、バックパックとして 機能する3WAYモデル。フラットオープン構造、多彩な内外ポケット、ネオプレーン素材を配した ハンドル、キャリーオン設計など実用性を徹底追求した商品です。
ITEM PAGE

B SALON BACKNUMBER